私たちの体内では、血液の循環によって全身の細胞に酸素と栄養が運ばれています。健康的な体を作るためには血流を良くし、全身の隅々まで酸素や栄養を行き渡らせることが重要です。
もし肩こりや腰痛、むくみといったさまざまな不調を抱えているとすれば、血流が悪化しているというサインです。
2016年に出版され話題になった本『血流がすべて解決する』著者・堀江昭佳をもとに、日ごろ意識することの少ない血流について、じっくりと考えてみましょう。
血流を改善すれば、心も体も健康になる!
血液の構成と役割とは
①血漿(けっしょう)
血液の半分以上を占め、成分の91%は水分です。残りの9%が固形成分であり、その大部分をたんぱく質が占めています。その役割としては
・組織呼吸の結果できた炭酸ガスを肺に運び、空気中に放出する
・栄養分を体内の各組織へ運び、そこで生じた代謝老廃物を腎臓から排出する
・血圧の保持
②血球(けっきゅう)
・赤血球・・・体の組織細胞に酸素を運び、不要な炭酸ガスを回収する
・白血球・・・体内に侵入する細菌やウイルスなどの異物を攻撃する免疫機能
・血小板・・・血液を凝固させ出血を抑える止血作用
人間の体内の血液の全量は体重の12分の1なので、60Kgの人には約5リットルの血液があります。心臓から送り出された血液は、体全体を循環し50~60秒で戻ってきます。
心臓が一日10万回拍動を繰り返しているので、約10,000リットル(ドラム缶50本分)の血液が、体の中へ送り出されている計算になります。これだけの動きが、私たちの意識しないところで行われているわけですから、人体の構造は本当に驚くべきものです。
また、人間の体内には60兆個の細胞があり、その3分の1の20兆個が血液の細胞なので、研究者によっては血液は人体最大の臓器と呼んでいるのです。
血流の働きとは
「血流」とは、心臓から出た血液が全身の血管を巡り、また心臓へ戻る流れのことです。全身を流れる血液は、「水分を保つ」「酸素や栄養を運ぶ」「老廃物や二酸化炭素を回収する」「体温を維持する」「体を守る(免疫力)」といった働きをしています。
血流が良くなると、さまざまな体調不良が改善されます。例えば女性に多い冷え性は、血行不良により熱エネルギーが体の隅々まで運搬できていないことが原因です。血流がよくなると熱エネルギーが効率よく運ばれるため、冷えの解消につながります。
また、肩こりは、血行不良により必要な酸素や栄養素が筋肉に運ばれず、筋肉が凝り固まってしまうために起こります。血行が促進されることで肩こりも改善されるので、肩こりにお悩みの方は血行をよくするケアを取り入れるといいでしょう。
さらに、血行が促進されると胃腸の働きも活発になるため、便秘を解消する効果も期待できます。
血流は、全身のすべての細胞に酸素や栄養を届けているうえ、脳やホルモンを通じて心の活動をも支えています。だからこそ、血流を改善するだけで、体の不調も心の悩みも解決に向かうのです。
血流悪化の症状と原因



血流悪化により体に現れる症状の例
●疲労・体のだるさ ●脳疲労(認知能力低下)
●皮膚のかゆみ ●皮膚の変色
●便秘 ●冷え性
●脚の腫れ ●痺れ
●食欲不振 ●静脈瘤
🔷疲労・体のだるさ、毛細血管の劣化
血流が悪いということは、体内の細胞が栄養をエネルギーに変換できないことと、細胞内に不要な毒素が溜まるということを意味します。
🔷脳疲労(認知能力低下)
脳の重量は人体の重量の2%余りですが、酸素の消費量はおおよそ20%です。他の細胞に比べてはるかに高い代謝率となっており、酸素の供給が途絶えると細胞が死んでしまいます。
🔷その他
水分が十分にいきわたらないことによる肌のトラブル、毛細血管の消滅や遮断されることによる冷え性、免疫力の低下による傷の治癒力の低下、肝臓での血流不足によって起こる食欲不振、消化システムの劣化による便秘などが起こります。
血流悪化の原因
<食事・栄養>
●水分不足
水分量が不足するとベトベトの血液になってしまいます
●糖分の摂りすぎ
血液がドロドロになったり、赤血球を変形させてしまいます
●脂質異常症
中性脂肪、コレステロール値が高いと血流悪化に止まらず、最悪血流がストップして
しまいます。
●鉄分不足
鉄分が不足すると、酸素運搬に必要なヘモグロビンが作られなくなる
<運動不足>
●運動不足・筋力不足
運動不足になると筋力が低下し、血流が悪化します。女性は特に筋力不足という共通
の課題があります。
<生活習慣・ストレス>
●更年期、ストレスなどのホルモンバランスの乱れ
毛細血管の血流は、毛細血管に繋がる「細動脈」という血管の拡張で決まりますが、
怒りやストレスなど交換神経が活発になると、細動脈が閉じられて血流が悪くなりま
す
●タバコ
タバコは体を冷やしたり、末梢神経を収縮させ、血流量が減少します
●飲酒
一時的にアルコールの力によって血管は拡張しますが、血小板の凝集や赤血球の死滅
によって、飲酒前より血流が悪化します
<病気>
●冷え性
冷えると体温を維持しようとして血管が開かなくなるので血流が悪化します
●糖尿病
糖分は血小板を凝集させ、赤血球を変形させるので血流が悪化します
●甲状腺機能低下症
心拍数が60以下の場合は甲状腺機能低下症の疑いがあります
<その他血流悪化の原因>
●加齢
筋肉量の低下、臓器の衰え、ホルモンバランスの乱れ、毛細血管の減少が考えられま
す。毛細血管は20代がピークで60代では40%減少します
●咀嚼・歯のかみ合わせ
顔の血液量を決める要因です
●薬
薬の種類によっては血流を悪化させます
●体のゆがみ
猫背や歪みによる筋肉の凝りは血流を悪化させます
●季節
冬場の寒さなど、体温の低下は血流を招きます
日常生活の中で血流を改善する方法とは
血流を悪くする要因として挙げた要因を改善すれば、血流は改善されるはずです。
改善すべき要件は身近にたくさんあるのですが、少し具体例を紹介します。
<血流を改善する食べ物>
●納豆
●生姜
●スパイス
●鮭
●黒酢



<日常生活の中で心掛けること>
●細めな水分補給
●なるべく階段を使う
●定期的に手足を伸ばしてストレッチ
●足を高くして寝る
●入浴の習慣をつける
どれも、それほど難しい事ではありませんね。できるところから始めてみましょう。
最後に冒頭で紹介した著者の、血流を改善する方法のアドバイスを紹介します。
もちろん、日々摂取している食べ物によっても、血流は大きく左右されます。血流をよくする食べ物を日頃から積極的に摂れば、血流促進につながるだけでなく、血流悪化を引き起こす病気を未然に防ぐことも可能です。
短期的に胃腸を元気にして血流を良くする方法として、私がおすすめしているのが「1週間夕食断食」です。現代生活は、胃腸に対する負担が過剰な場合が多いので、疲れたときに夕食を抜くと朝が楽になります。
食べたものは消化されて栄養として吸収されると、肝臓に運ばれます。本来、漢方では夜は肝を休めるときなのですが、就寝前に夕食をたくさん食べると、肝が休まらずに栄養の処理をさせられ、機能がおかしくなってきます。
西洋医学的にも肝臓は人体で一番血を蓄えている臓器ですし、漢方でも血を蔵するところです。そこが過労状態になると、血の質が悪くなり、血を流す力も低下してきます。ですから夕食断食をすると、胃腸や肝臓が休まることで、消化吸収のはたらきが高まり、血流を良くすることができるのです。
完全断食は専門家の指導のもとで行う方がいいので自己流はすすめませんが、夕食だけ抜くなら無理なく1週間続けられます。朝食・昼食は通常通り食べてよく、仕事の合間のコーヒーや紅茶も飲んでよく、夕食代わりに固形物のないスープや酵素ジュースなら飲んでもよい、という方法です。
1週間が無理なら1日でも2~3日でもやらないよりはいいですが、1週間続けると変化を実感しやすいですし、少ない量でも満腹感を得られるようになるのでその後も食べる量が減ります。そうなったら、調子の悪いときだけ抜くのでも構いません。
血の巡りを良くするためには血がサラサラの状態である必要があり、いわゆる「ドロドロ血液」では、血流も滞ってしまいます。サラサラな血を作り出すために、毎日の食生活はとても重要なのです。今回は、血流を良くする効果が期待できる食品と、血流を悪くする食習慣について見ていきましょう。