風呂に浸からない日本人が増えている
入浴は湯船派?シャワー派?「入浴は湯船につからずシャワーで済ませることが多いほうだ」と回答したのは、全体の32%。3人にひとりがシャワー派と判明しました。
湯舟に浸かる入浴の効能を信じる者にとって残念な結果ですが、さらに詳しく調べてみると意外な結果が報告されました。
◆性別・年代別では、全体的に年齢が下がるにつれてシャワー派が増えている。
◆30代は湯船派が盛り返す。小さな子どものいる家庭も多い30代は、いっしょに湯船に入り、コミュニケーションの時間に宛てていると予想できる。
◆60代でも4人にひとりは、シャワーで入浴を済ますことが多いと回答している。
◆年収高いほどシャワー派増加年収別で集計すると、700万以下のシャワー派は30%程度。しかし、700~1,000万は42%、1,000万以上はほぼ半数と、シャワー派が増えてくる。
経済的な理由でシャワー派な若者が多いことは理解できるものの、高収入帯でシャワー派が多くなるのは意外なことです。
さらに、湯舟に浸からない理由を調べてみると、以下のようになります。
風呂に入らない理由
- 水道代がもったいない
- バスタブの掃除が面倒くさい
- 時間がもったいない
- 風呂に入るより早く寝たい
- 追い炊きができない風呂釜
仕事に追われたり、SNSやインターネットなど、時間に余裕のない現代人のライフスタイルの現状といったところでしょうか。
日本人はなぜ、湯に浸かるのか
733年の成立と言われる『出雲国風土記(いずものくにふどき)』には、「一度温泉に入るとどんな病気も治癒してしまう」と書かれてあります。今から1300年近くも前、化粧品や医薬品がなかった時代、既にその効能は認識されていたのです。
また、8世紀の中頃、大陸から数多くの仏教経典と共に「温室経(うんじつぎょう)」というお経が入ってきました。これはとどのつまり、「風呂に入ると功徳が得られる」という教えです。
沸かしたお湯や温泉は、肉体的に気持ちが良いだけでなく、「湯浴(ゆあ)みすると功徳が得られる。7つの病を除くことができ、七福が得られる」と説く経典が諸手を挙げて歓迎されたのは想像に難くありません。
神道の「禊ぎ」の精神と仏教の「温室経」が融合した結果、風呂好き、温泉好き、清潔好きの民族が生まれたのではないかと考えることができるでしょう。
欧米の単に体の表面の汚れをシャワーによって“洗い流す文化”ではなく、心の汚れまでを洗い清める日本の“浸(つ)かる文化”、つまり温泉文化がこうして誕生したのです。
シャワーしか浴びない人は損をしている。入浴で健康増進!
医学的にも証明されている入浴の3つの健康効果を改めてご紹介します
①温熱作用によるもの
お風呂に入ると「あたたまって疲れが取れる」
お湯に浸かると当然体はあたたまります。これが温熱作用です。
温熱作用とは、どのような効果があるかというと、
・皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、血流が良くなります。
・それにより体内の老廃物や疲労物質の除去、コリがほぐれ疲れが取れます。
・内臓の働きを助け、自律神経をコントロールする作用もあります。腎臓の働きもよくなり、利尿作用がはたらきます。
入浴の仕方によってはヒートショックプロテイン(HSP)が生成され、細胞が活性化し、免疫力アップも期待できます。
ヒートショックプロテイン(HSP):傷ついた細胞を修復し、体を元気にするのがHSPの役割です。深部体温は体温よりも1.5℃高く、38℃になるとHSPの効果が得られるといわれています。
②水圧作用によるもの
お風呂に入ると「全身の血行が良くなる」
お風呂でも、水圧を受けます。この圧力はウエストが3~6cmも細くなるほど!
それが身体にどういう影響があるのでしょう?
この圧力で、足にたまった血液が押し戻され、心臓の働きを活発にし、血液の循環を促進します。また、腹部にかかる水圧が横隔膜を押し上げて肺の容量を減少させるため、空気を補うために呼吸の回数が増え心肺機能が高まります。
③浮力作用によるもの
お風呂に入ると「気分がリラックスする」
プールや海に入ると浮力が働いて、体が浮きますね。
これは、湯船の底に身体が沈んでいてもきちんと働いています。知っていました?
お風呂に浸かると、体重は約9分の1程度になります。普段体重を支えている筋肉や関節は、その役割から開放され、緊張からくる脳への刺激が減少します。
見えない身体の負担を軽減することにより、心も開放されてゆくのです。
このように入浴にはたくさんの効能があります。シャワーだけでは体温も十分に上がらず、お風呂がもたらす温熱効果がしっかりと発揮されません。体が温まらなければ、血液が循環せず、疲労回復効果も低くなってしまうのです。どんなに忙しい毎日でも、しっかり自分の身体をケアして、元気な毎日を送ってください。
次回は効果的な入浴法をご紹介します。